こんにちは。
食品メーカーで営業企画の仕事をしている三宅と申します。
36歳、正真正銘の文系出身で、数学は高校で置いてきた人間です。
それが3年前、部署異動でデータ分析を任されることになりました。
当時の私はExcelの平均値だけを頼りに資料を作っては、上司に「この数字、本当に信用していいの?」と突っ込まれる日々でした。
反論する知識がないので、毎回「確認します」と持ち帰るしかありません。
グラフの作り方は検索すれば出てきますが、「その数字をどう解釈するか」は検索だけでは身につきませんでした。
そこで昨年の夏、思い切ってひとつのルールを決めました。
「統計学の勉強は、通勤電車の中だけでやる」というものです。
家に帰れば子どもの世話があり、休日にまとまった時間を確保する自信もない。
それなら毎日必ず発生する通勤時間に全部押し込むしかない、という消去法の決断でした。
この記事では、片道45分の電車通勤だけで統計学を1年間学んでみて、実際に何をどの順番でやったのか、どこで挫折しかけたのか、仕事がどう変わったのかを正直に書きます。
「数字は苦手だけど、そろそろ逃げられない」という方の参考になればうれしいです。
目次
通勤時間は「1日で一番安定した勉強時間」だった
まず、なぜ通勤時間だったのかという話からです。
総務省統計局の令和3年社会生活基本調査によると、平日に通勤・通学をした人の平均時間は、往復で1時間19分となっています。
首都圏はさらに長く、神奈川県では1時間40分、千葉県と東京都では1時間35分です。
一方で同じ調査を見ると、「学習・自己啓発・訓練」に使われている時間は1日平均でわずか13分(10歳以上・週全体の平均)しかありません。
この2つの数字を並べたとき、少し不思議な気持ちになりました。
多くの社会人は、勉強に使う時間の何倍もの時間を、毎日の移動に使っていることになるからです。
1時間19分あれば、単純計算で1日の平均学習時間の6倍です。
しかもこの時間は、会議や残業のように誰かに奪われることがありません。
私はこの数字を見て、発想を変えました。
「勉強時間を新しく作る」のではなく、「すでにある移動時間を勉強に転用する」ほうが、自分には現実的だと考えたのです。
実際に1年やってみて、通勤時間には勉強に向いた特徴が3つあると感じています。
- 毎日ほぼ同じ時刻に、強制的に発生する
- 降りる駅が決まっているので、集中が切れる前に終わる
- 電車内ではスマホと本以外にやることがない
意志の力で「今日は帰ったら勉強しよう」と決めても、私の場合はまず続きません。
実際、過去に何度も夜の勉強計画を立てては、1週間で消滅させてきました。
「電車に乗ったら統計学を開く」と、行動を場所に紐づけたこと。
振り返ってみると、これが1年続いた最大の理由だったと思います。
参考までに、私の1日の型も紹介しておきます。
行きの電車は頭が働くので、新しいテーマのインプットに使いました。
本や講座の動画を進めるのは、基本的に朝だけです。
帰りの電車は疲れていて、新しいことはほとんど頭に入りません。
だから、朝に読んだ内容をスマホのメモに3行で要約する、前日のページを読み返す、といった復習に割り切りました。
要約は凝らなくて構いません。
「標準偏差は、平均からの離れ具合をならした数字」くらいの雑なメモで十分です。
翌朝この3行を読み返してから新しいテーマに進むと、前日の内容が驚くほど戻ってきます。
この「朝はインプット、夜は復習」という型を決めてからは、その日の気分で何をやるか迷うことがなくなりました。
迷わないことは、続けるうえで想像以上に大事です。
1年間で実際にやったこと
先に全体像をお見せします。
私の1年間は、大きく3つの期間に分かれていました。
| 時期 | 使った教材 | 目的 |
|---|---|---|
| 1〜3か月目 | マンガ形式の入門書 | 数式を追わず「統計の考え方」だけをつかむ |
| 4〜6か月目 | 無料のオンライン講座 | スマホ動画で基礎を体系的に整理する |
| 7〜12か月目 | 検定対策の問題集 | 統計検定3級を目標に問題演習をする |
それぞれの期間で何をやったのか、順番に説明します。
最初の3か月:マンガ入門書で「考え方」をつかむ
実は、統計学への挑戦は今回が初めてではありません。
数年前に定番と言われる分厚い教科書を買い、シグマ記号が出てきた序盤で本を閉じた過去があります。
その反省から、1冊目はマンガ形式の入門書にしました。
揺れる電車内で立ったまま数式を追うのは物理的に無理がありますが、マンガならつり革につかまりながらでも読み進められます。
「マンガで統計学なんて身につくのか」と思われるかもしれません。
ただ、最初の3か月の目的は、計算ができるようになることではないのです。
「平均だけでは実態が分からない」。
「データの散らばりを見る道具が標準偏差」。
「相関があることと、原因であることは別」。
こうした考え方の骨組みを、数式抜きで頭に入れることが目的でした。
ここを飛ばしていきなり数式に入ったことが、過去の挫折の原因だったからです。
実際、骨組みを入れてから数式に戻ると、同じ式でも「これは散らばりを数字にしているだけだ」と意味が見えるようになります。
意味の分かる数式は、暗号ではなくただの道具です。
ちなみに、もし今から始める方に選択肢として挙げたいのが、今年8月に出たばかりの中川功一さんの新刊です。
著者は東京大学で経済学博士を取得した経営学者で、YouTubeやオンラインスクールで経営学を教えている方でもあります。
難しいことをやさしく話すことに慣れている書き手だという印象です。
内容は、平均や標準偏差から相関、回帰分析、確率、推定までを全80テーマのマンガと解説で扱うもので、192ページに統計学の入り口がひと通り詰まっています。
統計の本なのに「確率をビジネスの武器にする」「実務で活かす」という章立てがあるのが特徴で、営業企画のような仕事をしている人間には、この目線が本当にありがたい。
書籍の詳しい内容や目次は、明日香出版社の『決定版 統計学がマンガで3時間でマスターできる本』の紹介ページで確認できます。
タイトルには「3時間でマスター」とありますが、通勤学習に落とし込むなら、1日2〜3テーマずつ読んで1〜2か月かける配分が現実的だと思います。
80テーマの細切れ構成は、駅から駅までの短い時間と相性がいいはずです。
4〜6か月目:無料のオンライン講座で体系化する
マンガで考え方がつかめたら、次は知識を体系立てて整理する段階です。
私が使ったのは、総務省統計局が提供している無料のオンライン講座「社会人のためのデータサイエンス入門」でした。
全4週の構成で、統計データの活用から統計学の基礎、データの見方、政府統計の使い方までを動画で学べます。
スマホで受講できるので、通勤学習との相性は抜群でした。
週ごとに確認テストがあり、得点率が6割を超えると修了証も発行されます。
受講料は無料です。
国がここまでの内容を無料で出しているのかというのが、受け終えたときの正直な感想でした。
個人的な収穫は、最終週の政府統計データの使い方でした。
e-Statという政府の統計ポータルサイトの存在をここで知り、業界や地域の統計データを自分で引けるようになったのは、営業企画の実務にそのまま効いています。
この時期に感じたのは、書籍と講座の相乗効果です。
マンガで読んだ内容が講座の動画で再登場するたびに、「あれはこういう意味だったのか」と知識がつながっていく感覚がありました。
同じ内容に別の教材で二度出会うと、記憶への残り方がまるで違います。
遠回りに見えて、これが一番の近道だったと思っています。
7〜12か月目:統計検定を「締め切り」にする
後半の半年は、統計検定3級の合格を目標に据えました。
統計検定は日本統計学会公式認定の検定試験で、1級以外はCBT方式が採用されており、全国のテスト会場で通年受験できます。
「年に1回の試験日に合わせる」のではなく、「準備ができた時点で申し込む」ができるので、繁忙期が読めない社会人でも締め切りを自分で設定できるのが利点です。
正直に言えば、統計検定3級を取ったからといって、社内で評価が上がるわけではありません。
資格手当が付くような種類のものでもないです。
それでも、合否という形で結果が出る目標を置いた効果は大きかったと感じています。
中だるみしていた7か月目以降、「不合格になったら今までの電車の時間が全部無駄になる」という気持ちが、いい意味でのプレッシャーになりました。
この期間のやり方は単純で、問題集を1冊だけ決めて、電車では問題を解き、間違えた問題に印をつけて週末に見直すだけです。
参考書を増やさなかったのは、カバンの荷物を増やしたくないという、通勤学習ならではの事情もあります。
レベル感としては、入門書と無料講座を終えた状態から問題集を2〜3周すれば手が届く、というのが私の実感です。
挫折しかけたポイントと対策
ここまで順調そうに書いてきましたが、実際は1年の間に何度もやめかけています。
つまずいた場面と、そのときに効いた対策を挙げておきます。
- 満員電車で本すら開けない日が続いた。混雑がひどい日は「講座の音声だけ聞く日」と割り切った
- 確率の単元で急に難しくなり、2週間ほど停滞した。分からない単元は飛ばして先に進み、2周目で戻ることにした
- 気づけばSNSを開いたまま降車駅に着いていた。通知を切り、ホーム画面の1枚目からSNSアプリを外した
- 飲み会や出張でリズムが崩れ、再開が億劫になった。「週5日できれば合格」と、最初からルールを緩めに設計し直した
特に効いたのは4つ目です。
「毎日必ずやる」と自分に課すと、途切れた瞬間にすべてを投げ出したくなります。
完璧な継続ではなく、「途切れても翌日に戻れる設計」にしておくこと。
通勤学習を1年続けた工夫を1つだけ挙げろと言われたら、私はこれを選びます。
なお、ここに挙げた対策はどれも根性とは無縁です。
根性で乗り切ろうとした過去の挑戦がすべて失敗しているので、今回は仕組みで解決することに徹しました。
1年続けて、仕事はどう変わったか
肝心の成果の話です。
先に言っておくと、1年でデータサイエンティストになれた、という話ではありません。
それでも、数字の見え方は確実に変わりました。
一番大きいのは、平均の裏にある散らばりを見る癖がついたことです。
「平均客単価は上がっているが、実は一部の大口顧客が全体を引き上げているだけで、大多数の単価はむしろ下がっている」といった構造を、自分の手で指摘できるようになりました。
相関と因果を区別する癖もつきました。
「広告を増やした月は売上が高い」というデータを見ても、そのまま企画書に書かず、季節要因やキャンペーンの影響をひと通り疑うようになった。
この2つだけでも、冒頭に書いた上司からの「この数字、信用していいの?」は目に見えて減りました。
数字への突っ込みに自分の言葉で答えられるようになったことが、この1年で得た一番の資産だと思います。
もうひとつ、副次的な変化があります。
他人の資料やニュースの数字に対しても、「母数はいくつか」「平均か中央値か」と確認する癖がつきました。
数字に強くなるというより、数字にだまされにくくなる感覚に近いです。
ちなみに、学び直しに動いている30代は私だけではないようです。
前述の社会生活基本調査では、過去1年間に学習・自己啓発を行った人の割合は30〜34歳で47.3%と、5年前から7.1ポイント上昇していて、この伸び幅は全年代の中でも目立って大きいものでした。
通勤電車で参考書やスマホの講座画面を開いていても、もう浮かない時代です。
むしろ同じ車両に、同志が何人も乗っているのだと思います。
まとめ
通勤時間だけで統計学を1年学んでみて分かったことを、最後に整理します。
- 勉強時間は新しく作るより、毎日必ず発生する通勤時間を転用するほうが続きやすい
- 順番は「マンガで考え方→無料講座で体系化→検定を締め切りにする」の3段階が挫折しにくい
- ルールは最初から緩めに設計し、途切れても翌日に戻れるようにしておく
統計学は、資格や肩書きより先に「数字の見え方」が変わる学問でした。
そしてその変化は、電車の中の細切れ時間だけでも十分に起こせます。
片道の電車で、1日2〜3テーマずつ。
それだけでも1年後には、会議で見える景色が少し変わっているはずです。
まずは明日の通勤から、カバンに1冊入れてみてください。
最終更新日 2026年8月28日 by echani



